ZEHのための建築材料たち
ZEHは、住まいの断熱性・省エネ性能を上げることと太陽光発電などでエネルギーを創ることを組み合わせることで、使用電気量をプラスマイナス「ゼロ」以下にする住宅のことです。
出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/zeh/)
この、「断熱性」と「省エネ性」は、どんなもので作り出されているのでしょうか。
ここでは、ZEHの正体とも言うべき、その建築材料たちを紹介していきます。
断熱性と省エネ性を実現する建築材料たち
ZEHの実現のためには、
- 断熱性
=家の外から伝わってくる空気の温度と家の中にある空気の温度をしっかりと分けること
- 省エネ性
=高性能の機械を導入することで、日常生活で発生するエネルギーを極力抑えること
の二つが重要になります。
省エネ性を高めるための断熱性。
つまり、家の中をしっかりと外気から隔離することで、エアコン効率を上げたり、室内同士での温度差を減らすことができるという考え方です。
では、この関係を作りだすために、実際にどのような建築材料が使われているのでしょうか。
また、ZEH基準を満たす“高性能”のものは、どれくらいの性能なのでしょうか。
特に性能値の影響が大きい4つの建築材料を選び、一昔前との性能比較をしてみたいと思います。
①断熱材
壁と屋根に入れられる断熱材は、最も広い面積で家の中を外気から遮断してくれます。
断熱材は、「材質」「熱伝導率」「厚さ」の3つで区分されます。
簡単に言えば、同じ材質・熱伝導率でも、大量に分厚く入れれば、断熱性能は向上します。
ただ、その分部屋の広さは狭くなってしまうジレンマがあったわけですが、近年の性能向上により、薄くても従来よりも熱伝導率が低いものが使われるようになりました。
- 旧省エネ(S55) グラスウール10K 0.05W/m・K
- ↓
- 10年前 グラスウール10K 0.05W/m・K
- ↓
- ZEH基準 高性能グラスウール16K 0.038W/m・K
※更に高性能なものもありますが、一般的な建築材料性能を比較しました。
ZEH基準の断熱材では、0.05→0.038W/m・Kと、約1.3倍の性能アップが行われています。
一見、それほど大きな差に思えないかもしれませんが、壁・天井全体に渡って敷き詰められる断熱材では、この違いはとても大きく実感できます。
②窓(ガラス&サッシ)
家で熱の出入りが最も多い場所はどこでしょうか。
それは、「窓」です。
特に、窓枠=サッシから熱が出入りし、室内が夏は暑く、冬は寒くなります。
室温を保つためには、この窓部分からの熱の出入りをどこまで抑えられるかが鍵となります。
従来は、アルミ建築材料のサッシで、窓ガラスも一枚だけのものが一般的でしたが、近年は、変わってきています。
- 旧省エネ(S55) アルミサッシ+単板ガラス 6.51W/㎡・K
- ↓
- 10年前 アルミサッシ+一般複層ガラス 4.65W/㎡・K
- ↓
- ZEH基準 樹脂窓+LOW-E複層ガラス 2.33W/㎡・K
※更に高性能なものもありますが、一般的な建築材料性能を比較しました。
窓は、家を構成する建築材料の中でも、空調などの電化製品の次に進化が著しいものです。
二重窓(一般複層ガラス)は、現在では広く広まっており、さらに、サッシもアルミから樹脂へ進化したことで、10年前と比べても断熱性能が2倍と飛躍的に高まりました。
また、この性能向上により、断熱性だけでなく、結露の発生も格段に抑えられるようになりました。
結露は、カビなどのアレルギーが発生する原因ともなっており、家族の健康を守るうえで、窓の性能向上は大きな役割を果たしていると言えます。
③玄関ドア
窓に続き、玄関ドアも同じように外気と触れる部分です。
玄関ドアは、面積が大きいため、単純に外気の影響を大きく受けます。
他にも、廊下に続いているのもポイントです。
廊下は、家の中で広い空間でありながら、人も物も少なく、空調の影響も受けづらい、暑くなりやすく冷え込みやすい場所です。
そして、廊下の温度は、廊下に接する室内に影響します。室内の壁には断熱材がありませんから、玄関の温度は、思っている以上に大きな範囲に影響していると言えます。
玄関ドアも、窓同様、近年大きく進歩している建築材料です。
- 旧省エネ(S55) アルミ+単板ガラス -
- ↓
- 10年前 アルミ+単板ガラス 4.65W/㎡・K
- ↓
- ZEH基準 アルミ+複層ガラス 4.07W/㎡・K
※更に高性能なものもありますが、一般的な建築材料性能を比較しました。
面積が大きい分、費用とデザインの面でアルミを使われているものが一般的ですが、ガラスは、複層ガラスが主流になっています。
また、アルミの玄関ドアでも、ドア枠の構造を改良した、さらに高性能なものも存在しします。
④給湯器
今までは、断熱性能を上げる建築材料でしたが、省エネ性能の分野で一番影響が大きいものは、給湯器です。
家全体のエネルギー消費の約1/4を占め、最も割合が大きいものです。
その分、技術革新も進んでおり、省エネ性能の高い製品が次々と出ています。
従来型の機器は、現在製造されておらず、使用もされていないほど、この10年で大きく変化が進んでいます。
- 旧省エネ(S55) ガス給湯器(従来型) 25.2GJ/年 熱効率 約80%
- ↓
- 10年前 ガス給湯器(従来型) 25.2GJ/年 熱効率 約80%
- ↓
- ZEH基準 高性能ガス給湯器(エコジョーズ) 22.1GJ/年 熱効率 約95%
※更に高性能なものもありますが、一般的な建築材料性能を比較しました。
省エネという概念が広く浸透していくに従ったことに伴い、給湯器の進化は、利便性から省エネ性にシフトチェンジが行われました。特に、約10年前の高性能ガス給湯器(エコジョーズ)の登場で大きく状況が変化しました。
現在一般的に広く普及しているものが、高性能ガス給湯器(エコジョーズ)ですが、従来型に比べて熱効率が15%も増えています。これは、革新的な性能向上でした。
現在では、更に高性能なハイブリッド給湯器(16GJ/年)もありますが、値段もまだ高価です。
ZEH基準は、高性能ガス給湯器で十分達成することが出来ます。
ZEHとは、高性能建築材料の組み合わせ
ここまで、4種類の建築材料をみてきました。
どの建築材料も、近年大きく性能が上がっていることがお分かりいただけたと思います。
もちろん、すべての建築材料を高性能にすることがベストですが、ZEH基準を満たす性能を求める場合、それぞれの家の設計に合わせて、どこを重視するか考えることが大きなポイントとなります。
ZEH基準の省エネ性能を満たせばいいため、窓を高性能にして、他を抑える、など、様々なパターンが考えられます。
ZEHとは、高性能建築材料の組み合わせを考えることでもあると言えます。
厳密な省エネ性能計算には、専門的な知識も必要となるため、ぜひ、設計士や担当者と相談しながら、自分にとっての一番いい配分を探し出しましょう。